事例紹介

業務の可視化・分析ができる「VSM」を習得し、DX・デジタル化支援の現場に活用

アビームコンサルティング株式会社様
研修事例
2023.7.27

DX推進 基礎講座 ~業務の視点から考える~」(以下、「DX推進 基礎講座」)は、DXの基本的な知識や必要性を本質的に理解するとともに、社内のDX推進を実践するための具体的なアプローチ手法の習得を目的とした公開型のプログラムです。

本研修には、DXを学ぶ映像講義に加え、DXに必要な業務フロー/プロセスを可視化する手法「Value Stream Mapping(以下、VSM)」を体験できるワークショップと、自業務での実践をかねた修了課題が含まれています。

2023年2月の開催回では、アジア発のグローバルコンサルティングファームであるアビームコンサルティング株式会社から5名様にご参加いただきました。顧客企業へのデジタル変革支援を数多く手掛ける中、「研修で体験したVSMの手法が実務に活かせる」と実感いただいたそうです。

本プログラムへの社員の参加を決めたオペレーショナルエクセレンスビジネスユニット シニアマネージャーの加藤様、メンバーとして業務を推進し、2ヶ月間にわたる講座を受講したマネージャーの佐倉様、コンサルタントの柴田様にお話を伺いました。


顧客企業により高い価値を提供するため、実用的な「VSM」の手法に着目

——貴社の事業内容と、所属部署の担当業務をお聞かせください。
加藤さん

アビームコンサルティングは、お客様の変革実現を実現するための経営戦略立案からビジネスコンサルティング、デジタルテクノロジーの導入・運用までを一貫して支援する総合コンサルティングファームです。日本に本社を置き、アジアを起点としてグローバルに事業を展開しています。

 

企業姿勢として掲げているのは「Real Partner®」。戦略の計画だけを担うのではなく、価値を共創するパートナーとしてお客様と一つのチームになり、中長期的に伴走することを大切にしています。

 

私たちが所属するのは、アウトソーシングを軸としてビジネス・IT両面からお客様の業務を継続的に変革し続ける役割を担うオペレーショナルエクセレンスビジネスユニットです。その中でも私を含めた3人は、ITサービスマネジメントや運用保守をメインにお客様の支援を行っています。私はシニアマネージャーとして、メンバーのマネジメントや育成などを担当しています。

——佐倉様、柴田様の担当業務についてもお教えください。
佐倉さん

自社が提供するコンサルティングサービスに活かせるナレッジを、社内の資産として蓄積・展開する役割を担っています。具体的には、ITサービスマネジメント関連情報の発信や、お客様を支援する中での成功事例を標準化して共有することなどが多いです。

 

また、コンサルタントとして、グローバルに展開されているお客様に対してシステム運用保守サービスを提供するプロジェクトチームに参画しています。その中で私は、多拠点にわたるチーム全体の運用に関する改善活動や業務の標準化、お客様の内製化支援など、さまざまな企画の立案から実行までを進めています。

柴田さん

私は加藤さんや佐倉さんと共に、お客様がITサービスマネジメントツールを導入される際に、計画策定から安定的な運用、改善活動までをサポートするプロジェクトに従事しています。また、ツール導入と並行し業務プロセスの整備もご支援しております。プロジェクトチーム内では、プロジェクトのタスク管理・推進や、成果物となるドキュメントの作成を担当しております。

—なぜ「DX推進 基礎講座」を受講しようと考えたのでしょうか?
加藤さん

ITサービスマネジメントの領域をメインとしたコンサルティングサービスの実践に向けて、より高度な知見を得たかったのが大きな理由です。

 

ITサービスマネジメントのフレームワークとしてはITIL®が有名ですが、お客様への支援にあたり、実際にどのようなツールを用いて、どのようなステップで議論をすればより高い価値を提供できるのかを日々模索していました。その中で、サービスを顧客に提供するための“価値の流れ”に着目し、現状の可視化と分析ができるVSMという手法を、プロジェクト単位で活用はしていたものの、改めて体系的に整理したいと考えたのです。

自社内でVSMを実践、業務上の課題を洗い出し、改善施策を考えるきっかけに

—講座を受講した感想をお聞かせください。
佐倉さん

これまで、社外の方を交えた公開型の研修にあまり参加したことがなかったのですが、まず受講者の方々の熱量に驚きました。講座中にはグループワークもあり、オンラインながら活発な意見交換ができ、濃密な時間を過ごせたと思います。

柴田さん

講師の方が具体的な事例、重要なポイントも交えてわかりやすくご説明くださったので、内容がとてもスムーズに理解できました。また、佐倉さんがおっしゃったように、他の受講者の方のアイデアや質問からも気づきが得られて、非常にインタラクティブな研修だと思いました。

——「DX推進 基礎講座」では、キックオフ研修、e-Learningによる映像講義を受講いただいた後、グループワークにてVSM作成に取り組みます。実際にVSMを学んでみてどのように感じられましたか?
研修中のグループワークで作成されたVSM
佐倉さん

VSMにおける業務フローの書き方が、価値提供に重点が置かれたシンプルなものだったことが印象的でした。私はこれまで、お客様の業務改革支援にあたって現行業務フローを書く場面がよくあったのですが、今回学んだVSMのアプローチは、これまで私が実践してきた方法とは少し異なっていたのです。

 

従来の業務フローでは、一つひとつの作業工程のほかに「誰が・どのように実施するのか」といった情報も含めます。業務の責任範囲が明確になるというメリットがあるものの、非効率な工程を洗い出すことを目的にした場合には、情報量が多いため見づらくなります。

 

一方で、VSMは一つの業務の流れや、最終的なお客様への提供価値がシンプルに可視化されます。業務工程が煩雑で手間がかかっていると悩む組織には、コンサルティングサービスの一環として、VSMの手法も導入できるとよいのではないかと感じました。

——具体的に、どのような点が導入に適していると感じられましたか?
佐倉さん

業務効率化にあたっては、まず作業の自動化やツール導入を検討されることが多いと思います。しかし、まずは既存の業務フローや自分たちのやり方を見直し、どの工程に行き詰まりや非効率が発生しているのかを洗い出すことが最優先です。

 

そういった意味で、VSMは効率化を検討する観点で非常に有用です。特に、これから本格的なデジタル化やDX推進に取り組むお客様にはぜひ提案していけたらと思います。

——研修の学びを、ぜひ現場に活かしていただけたら幸いです。柴田さんにも、VSMに取り組んだ感想についてお伺いしたいです。
柴田さん

研修中にケーススタディで取り組んだVSM作成では、業務を構成する一つひとつの工程を洗い出すのが大変でした。特に、タスクが他の部門や担当者に受け渡される際は、工程間のつながりが不明瞭になりがちです。担当者ごとに見えている業務の範囲が異なるため、いかに普段の業務でサイロ化(※)が起こりやすいのかを実感しました。

 

VSM作成ではホワイトボードツールを活用したのですが、業務の流れを図にして共有できるので、フラットに意見やアイデアが出しやすいのもよかったです。初めてやり取りする社外の方とも活発なディスカッションが可能な研修設計だと感じましたね。

 

※組織内で各部署の業務プロセス、システムなどが独立して存在し、全体の連携や情報共有が図れない状態にあること

——修了課題となる自社内でのVSM作成についても、どのように取り組まれたかお聞かせください。
佐倉さん

研修中のグループワークでVSMの手法を一通り学んだ後、実際に自社の業務を取り上げて社内のメンバーとVSM作成に取り組みました。他のメンバーも、「業務上の課題が見えやすい手法だ」と手ごたえを感じていたようです。

 

そこから改善施策の検討にまで議論が発展し、ネクストアクションがすんなりと決められたことにも良い意味で驚きがありました。

柴田さん

実際に学んだVSMを活用することで、業務手順の中で非効率な部分の洗い出しがスムーズにできて、全員が共通認識を持てたのがよかったです。改善施策をチームメンバーですり合わせするときにも、どんな立場の人でもスムーズに意見出しができるようなアプローチだなと思います。

短期的な業務改善にとどまらず、経営戦略に寄与するコンサルティングパートナーであるために

——研修での学びを、現場での実務にどのように活かせそうでしょうか?
佐倉さん

コンサルタントとして今まで実践してきた継続的業務改善のアプローチについて、改めて体系的に理解することができました。現場でも、VSMで学んだ“業務価値の流れ”に着目して、お客様に対して短期的な業務改善の先にある事業成長や、企業価値向上を見据えた会話や提案ができるようになったと感じます。

 

昨今、支援先のお客様からは、DXに関連する課題をお聞かせいただくことが多いです。課題に対する直接的なソリューションを提示するだけでなく、いかにお客様の組織変革や経営戦略の実現に寄与していくか、という視点で日々の業務に向き合えるようになりました。

柴田さん

お客様の事業支援に関わる中で、課題の洗い出しや継続的改善のために、VSMという手法を提案できそうです。今後は、お客様に対してより多角的に伴走できるのではないかと考えています。

加藤さん

2人には、今回の研修で学んだことを社内へ共有する役割を担ってもらっています。目指すのは、実務できちんと価値を提供するための手法を体系化し、誰もが実行できるような組織となることです。組織全体の底上げも、ぜひ推進していってほしいと思います。


お客様情報

社名  アビームコンサルティング株式会社
業種  コンサルティング
創立  1981年4月1日
資本金  62億円
従業員数  7,523名 (2023年4月1日現在 連結)
ウェブサイト https://www.abeam.com/jp/ja

DX推進 基礎講座 ~業務の視点から考える~

開催方法:オンラインライブ研修(Zoom)、e-Learning、テキストディスカッション
参加者定員:24名 ※最小催行人数12名 ※一社複数名を推奨(最大6名迄/社)
参加費:8.8万円(税込)


※取材は2023年6月に実施しました。
ライター:Yui Murao